ドラギマジックにも限界か?ドラギ総裁の発言と実際の矛盾

ユーロ圏の総合消費者物価指数(HICP)は現在、前年比マイナス0.1%の水準にあります。

ECBのバランスシートは2016年9月までにユーロ圏域内総生産(GDP)の10%強に達する

とみられますが、その規模は米連邦準備制度理事会(FRB)や英中銀イングランド銀行の半分で、

日本銀行と比べればわずか6分の1にすぎません。インフレが急上昇する危険性は明らかに小さく、

追加緩和の余地は十分にあります。

ECBは新たな債券購入に限界が

eurpic

 だが、QEを通じての国債買い入れはユーロ圏加盟国の出資比率に応じて行われます。

つまり、毎月600億ユーロずつの買い入れのうち、大半はドイツ国債を対象としなければなりません。

だが、ドイツの堅実な経済運営の結果、ドイツ国債市場は少なくともユーロ圏の標準からみると小さいです。

ECBが出資比率の配分枠を守る限り、ドイツ国債市場の規模がQEの上限を抑えることになります。

 さらに、ギリシャの債務問題を受け、ユーロ圏の債券にはすべて、75%の債券保有者が合意すれば

発行体の政府は債券の条件を再編できるというような集団行動条項がついています。

QEに関するECBの規則では、ECBは少数の債券保有者にとどまり、債務再編の判断に影響するような

立場になることは決してありません。この条項がついていなければ、ECBは33%まで買い入れることが可能ですが、

この条項のついた国債については25%以上購入できません。既発国債が償還を迎えるにつれ、ECBが保有する

国債は集団行動条項がついたものになりつつあります。

縛られているルールとは?

 ECBは社債など民間資産の買い入れを増やしてこの問題を回避できるかもしれませんが、出資比率の配分

には縛られ、欧州全体で事業を展開する大手企業の社債を買い入れるのはさらに難しくなります。

 ECBのQEはこれら全ての面で規模が限られるため、追加緩和が期待されるときにQEの拡大が

疑問視されると、ECBはユーロ相場を低く誘導するどころか、ユーロ高を食い止めることさえできなく

なるかもしれません。そうなれば、インフレ率を押し上げるのは一段と難しくなる。日本がデフレに

陥った一因が円高にあったことはほぼ間違いない。

 したがって、ECBは限られた政策手段の利用には慎重にならざるを得ない。

月額600億ユーロの買い入れ額を拡大すると、ECBは事実上の限界に速やかに近づくことになります。

むしろ、2016年9月に買い入れ措置を終了するという当初の計画をやめ、必要な限り続けることを明らか

にするしかないようです。月額を増やさずにQEの期間を延長すれば、QEの限界は18年程度まで伸びる

ことができます。これでECBは何でもやるという約束を守ることができますが、これでユーロ安を導くことが

できるかどうかは疑問がのこります。

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